アウルボーイの日記

カシワギマサルを主人公に、武道場の建設経過を書いて来ました。

フクロウの回想ー4(石油コンビナート工事)

運転手は別扱い

工事現場の事務所脇に駐車して、社長が挨拶に行き当日の業務指示を貰う。
未だ20代の現場監督が今日一日付き添い、現場の進捗で一週間くらい続くらしい。

 

最初は、新たに足場を組む場所にパイプのジョイント部分を、カマスに入った状態で積み込む。長いパイプは針金で結束して大型のトラックで運ぶが、小物の供給は4トン車で運ぶ。

現代の様にフォークリフトも無い時代で、殆ど手作業になる社長と先輩2人は汗だく。

 

健太は車から降りずに待機なので、朝食のおにぎりを食べる時間が十分にある。仕事は一定ではなくジョイントが終わると、歩み板や側溝のU字溝・セメントなど工事の最終工程で手直し作業の様だ。

 

全体工事が終わり、道路下の配管工事で掘り返したり補修したり、一定ではない。結構休みなく積んだり降ろしたり、忙しい仕事が続く。

恙無く一日の作業終了

初冬の夕暮れで太陽が傾き始めたころ
「本日は終了します」と、言う声にホッとしながら荷台部分を整理して帰り支度、3人の作業員は、ぐったりして助手席に重なるように乗り込んで来た。

 

それでも社長が
「健太ぁ 帰りにガソリンスタンドに寄れよ」と、命令する。

「どこでも良いんですか?」と聞くと
「決まっているだろう、日石だよ」と言う。そうだよな、日石の仕事をして居るんだものな、一人合点して最初のガソリンスタンドに入る。

社長が事務所に行き、何かを頼んだようで、店員が
「アオリを外してください」と、ドラム缶をゴロゴロ転がして来た。

店員が歩み板を2枚持って来て 斜めにかけて
「ここから押し上げますから、手伝ってください」と、言うので助手席の2人にも声を掛け4人で押し上げる。

 
ガボ~ン~ガボ~ンと音がする、液体だ。結構重いもんだ。
更に小さな缶をリヤカーみたいな台車に載せて持ってきた。

 「これはグリースです」と、先輩2人と店員で持ち上げ載せる。

 

社長が、何か書類を見ながらぶつぶつ言いながら

「なんだかんだと、経費が掛かるもんだなぁ」と、言いながら乗り込む。

 皆疲れてシャキッとしない

朝と人数は同じだが、運転席が狭く感じるが文句も言えず、エンジンを掛ける。
さっきの店員ともう一人出てきて、手を振っている国道の右を確認して、静かに左に走り出さす。

 

夕闇も濃くなり遠く方でピカリ~ピカリと明かりが見える。

「あの光っているのは何ですかぁ~」聞いて見る。

 

助手席の門脇さんが
「方角的には日高山脈の端の方だから、襟裳岬の灯台かなぁ~」と言う。

f:id:owlboy2:20200127171338p:plain

日高半島先端に襟裳岬(^^♪

歌謡曲の「襟裳岬」はまだ出て居なかったので、東北から来た健太には襟裳岬が何なのか分らないまま、荷を積んで居ないトラックは快調に走る。

 

右側の海から吹く風が、砂を巻き上げ強く吹き始めている。海に近いので道路まで潮が飛び凍り始めてのか黒く見える。砂と海水が交互に飛んでくるので、外は寒そうだ。

あっつ危ない!!

もうすぐ幌別川の工事個所で、迂回道路が海側になるので減速しようとシフトに手を掛けたが社長の足が邪魔でシフトがサードに入らず減速できない。

路面が凍っているので、ブレーキは危ないという思いがあったので、エンジンブレーキに拘わり
「社長!足が~」と、大きな声を出したが

社長がシフトレバーをトップの位置で固定して様な状態だ。社長が気付き
「う~ん」と、言った。

 

助手席の大友先輩が
「健太ぁ~もうすぐ川だぁ~」と、大きな声で叫ぶ


健太もトップギヤのまま、フットブレーキとを踏みサイドブレーキも引く。

 車は迂回道路に向かうように右に少し切ったので、ヘッドは右に後部は左に流れ、ほぼ直角にまがる、工事中の土嚢を押しながら動きは鈍くなった。

車全体は川の方へ横に動いて居たらしい、左側が水に浸かって助手席にも入った。

 

実は運転台の健太は、車の回転で頭をミラーの取り付け部分に当たり気絶したので、状況は分からなかった。

 

この辺からは、先輩の門脇さんと大友さんから聞いた話です。

 真っすぐ走っていた車が、工事現場に近くなり、健太が社長に呼び掛けたが直ぐ起きなかった。

 

ブレーキが掛かったが車輪は滑りながら回転し、工事現場を避ける様に右に向いて荷台側どんどん川に落ちて行った。

 

助手席の2人はびしょぬれで、寒かったが社長も左半分が濡れ、運転席は濡れないが健太は頭から血を流して気絶して動かなかい。

 生まれたばかりの自衛隊さんに救われる。

その時反対車線から保安隊から陸上自衛隊になったばかりのジープが来て、健太を引きずり出し手当をしたが気付かず、包帯の様なものを押し当て止血、一人が付き添い其のままジープに載せた。

 

指揮官が
「君たちは何処から来たの?」と、聞くので
「登別温泉に返るところです」と、言うと瞬時に反応
「負傷者は登別国立病院に搬送」と、隊員に伝達、サイレンを鳴らして走り出した。

 

先輩たちは。その時自分たちも一緒に行けると思ったんだが、口を利けるので事情聴取の様に説明して寒くて寒くて凍えて居たよ。

 

社長も部隊の隊長みたいな人から色々聞かれていたが、トラックが工事現場と迂回路に邪魔しているので、幌別の部隊から大型の牽引車みたいので、トラックを引き上げそのまま引いて居ちゃった。

 

よく見ると両方の車線に車が数珠つなぎで、自衛隊の車は大小10台ほど連なり、先頭のジープが健太の輸送に、中頃のいた中型の輸送車が社長たちを運んだようだ。

 

工事中の迂回路は片側がギリギリ一台で、健太たちのトラックが横にトウセンボしているため上下とも大渋滞を起こしていた様だ。

 

僕たちは寒い寒いというので、毛布でくるんでくれて大きな車に乗せられ、サイレンを鳴らしながら健太と同じように国立病院に運んでもらったよ。

 地元の国立病院に搬送

健太は、病院に着く前に気が付いたが、頭が重くボーッとしてジープでは隊員が動かないように抑えて呉れて、病院に着いても上手く説明できず、隊員が説明してようだ。

 

傷を縫って治療が終わった頃に、社長たちも到着した。
健太は縫合して顔を洗って貰って、夜の10時ごろに帰宅したが社長は一晩、先輩2人は肺炎になり10日ほど入院、一番軽かったのが頭を怪我した健太だった。

先輩たちは、健太の出血が多く顔が真っ赤になって居たので、死んだと思っていた様だ。

 

不思議なのは健太が無免許で運転していたことや、初めての運転だったことなど誰も質問せず、警察への通報も無く積み荷のドラム缶とグリス缶が流されたことが、唯一の被害と先輩たちが入院したことが悔やまれるくらいの被害??

 

車は、幌別の部隊に運ばれ整備されたようで、部隊から電話が来て車が走るようになったので、取りに来なさいと言われた。

 

社長は知り合いのバスの運転手さん2人に頼み小型トラックを借りて、お酒とビールをそれなりに積み込み、手土産に持って行きお礼代わりにしたようだ。

 

怪我は翌日と 一週間ほどして抜糸し、カルルスに戻る。トラックは先日部隊から引き取って呉れた杉本さんが、支店の脇に置いてあった。